寂れた港町の繁盛店は、新鮮でボリューム満点!
しまった!!
目が覚めるともう時計は9:30を回っていた。
慌てて飛び起きると市場行きを諦め、駅へと急ぐ。
最終日。
空港までの帰りを考慮し、JR の1日周遊券を購入。列車に乗り込む。
札幌から列車に揺られ降り立った先は、およそ20年ぶりの小樽。
微かながら駅構内と
駅舎、
駅前の通りの風景が記憶に残っている。
バスセンターで乗り放題チケットを購入し、目的地行きのバス発着番号の位置に並ぶ。
乗り込んでしばらく行った辺りで不穏な雰囲気に気づく。
電光掲示板の停留所表記に書かれたアルファベットが間違いなく違うのだ。
バスセンターでもらったガイドの時刻表にひっそりと、
該当路線の運行がかなり限定されている表記。どうやら目指す先への巡回コースは、冬まじかのこの時期は運行していないようだ。
気づくのが遅かった・・・
路線バスで向かおうと慌ててバスを降りる。
幸か不幸か次のバスの出発時間まであと15分。早足で駅前のバスターミナルへ。
1時間に2本しかない路線バスだけにこれを乗り過ごすとタクシーで行くしかない。
一か八かで小走りで駅前まで向かい、なんとか発車直前ギリギリセーフ。
タクシーなら駅前から1500円ほどで行けるらしいがバスってところがまた旅っぽい感じがしていい。
大人の選択肢にはしたくなかったので回避できたのは良かった。
目的地までのバスの車窓から目にする海と小樽の町並みはなんとも哀愁があっていい。
頭の中では石原裕次郎の『北の旅人』。
乗車すること20分。
辿り着いたら岬のはずれならぬ、寂れた漁港。
バスを降りると、外は小雨交じり。
近くには水族館やマリーナがあるが、ひとけは全くと言っていいほど感じない。
雨宿りしながらしばし歩くと目的地が見えてきた。
青塚食堂
店の軒先には駅からこの店へ客を乗せてきたであろうタクシーの運転手が数人たむろし、
食べ終わるのを待っている。
その横では店の人が串刺しの魚を焼いている。
暖簾をくぐり店内に入ると、物凄い賑わい。
外から感じた、あの閑散とした風景がまるで嘘のようだ。
店内は広々とし、小上がり、テーブル席とかなりの人数が入っている。
2階にも席はあるようだ。
若干だが、空席がある。
忙しく動き回っている女性店員を呼び止め、どこに座ればよいかと聞いてみると、
入口に最も近いテーブル席に座っていたおじちゃんが「隣、空いてるよ」と声をかけてきた。
これも何かの縁。
せっかくなので隣の席に向かい合わせで座ることにした。
海を眺めながら食べることのできる、特等席。
次から次へと訪れては、入れ替わっていく客。
ほとんどが団体または数人グループやカップル。
一人なのは隣のおじちゃんと二人だけ。
メニューでまず目に入ってきたのは、いくら丼とうにいくら丼。
しかも「時価」という文字。
恐る恐る聞いてみると、この日はうに丼が4000円、うにイクラ丼が4200円。
さすがにそこまでは予算がない。
メニューを改めて見返し、周りで食べている人を見回してみるが、
焼き魚・刺身どれをとっても旨そう。選べない・・・
焼き魚も刺身も食べたいが、そんな定食はないものか?
メニューの最後部に大漁定食(2310円)を見つけた。
焼き魚はニシン・お刺身盛り合わせ、つぶ貝となんと豪華な組み合わせ。
この店での想定予算は2000円以内。
ちょっと予算オーバーだがこの内容なら若干の予算オーバーでも食べないてはないだろう。
ラーメンやカレー、丼物などもあり。
近くで焼かれる魚の煙、そして海を眺め、しばし隣のおじちゃんと話しながら待つ。
客は相変わらず次々と訪れ、店内はてんてこ舞いな様子。
いつもこんな感じで忙しい、人気店なのだろう。
隣のおじちゃんは、札幌市内からしばしばこの食堂に足を運んでいるらしい。
来るときには必ず今座っている席を予約。
入れている焼酎のボトルをちびちびやりながら刺身を食べ、海を見ながらのんびりするのが好きなのだそうだ。
なんとまぁ羨ましいことか。
この辺り天候によっては、蜃気楼が見えることもあることも話してくれた。
こんな生活、いつかしてみたいものだ。
そうこうしているうちに、五月雨に料理が運ばれてきた。
まずは刺身から。5品が品よく並び、見た目にも新鮮。
続いて店内の焼き場にて焼かれていた熱々のつぶ貝、
ご飯・ホタテの稚貝の味噌汁、
イカの塩辛、
わかめの煮物、
漬物などがセットされた盆が置かれると、これでもうテーブル一杯。
更にトドメを刺すかのように、30センチはあろうかというニシン焼きが。
盆には乗り切らないほどの豪華さとボリューム。
「これにして良かった・・・」という満足感と食べきれるのかと言う不安が押し寄せる。
まずは味噌汁から。なんとも上品な味わい。
正直、こんな感じの店だと料理は大味なのだろうなと思っていたが、予想に反して上品。
これはうれしい誤算。
熱々のうちにとつぶ貝を食べると、余計なわたの苦味もなく身もしっかり。
食べ応えも十分。
刺身も新鮮で、弾力間と舌触りがいい。
さらに巨大なニシンをほぐして食べるが、まぁこちらも見た目以上に食べ応え十分。
ちょっと塩味が足りないかとも思ったが、魚の身の甘みを楽しんだ後、しょうゆ・塩をつけながらいただく。
しかし、食べども食べども減らない。
全体的に上品な味付けのため、ご飯のペースはさほどあがらない。
そのボリュームに若干苦しみながらも、ようやく完食した頃に、
おじちゃんがは食べていた朝上がったばかりの烏賊焼き、そして旬のしゃこのお裾分けしてくれた。
ありがたいやらつらいやら。
会計を済ませ、おじちゃんに礼を言い、店を後にするころには外は晴れ。
小樽駅までのバスを待つ間、腹ごなしに軽く散策。
海の向こうには、虹が出ていた。
哀愁漂う北の海。
ポツンとしたバス停。
どこかで見たことのあるような風景。
この日もまた、心温まる出会いがあった。
おじちゃん、いつまでもお元気で。
そして、小樽へ想いでを辿りに。
民宿 青塚食堂
住所北海道小樽市祝津3-210
0134-22-8034
営業時間10:00~20:00
by michikusao2 | 2014-10-17 14:31 | 旅